ぶどう膜炎
目次
- 1 ぶどう膜炎の種類
- 2 治療法
- 3 ぶどう膜炎の概要と重要性
- 4 診断手順と検査項目
- 5 ぶどう膜炎の原因と分類
- 6 ぶどう膜炎の治療原則と薬剤
- 7 ぶどう膜炎の定義と分類
- 8 問診の重要性と内容
- 9 一般身体検査の実施
- 10 視診による眼の評価
- 11 視覚検査の実施
- 12 反射検査の重要性
- 13 細隙灯顕微鏡検査の実施
- 14 眼圧検査の実施
- 15 血液検査の実施
- 16 特殊検査の実施
- 17 ぶどう膜炎の原因と診断
- 18 感染性ぶどう膜炎の種類
- 19 免疫介在性ぶどう膜炎の特徴
- 20 外傷性ぶどう膜炎の原因
- 21 全身疾患によるぶどう膜炎
- 22 眼内腫瘍によるぶどう膜炎
- 23 特発性ぶどう膜炎の特徴
- 24 ぶどう膜炎治療の原則
- 25 ぶどう膜炎治療薬の種類
- 26 ステロイド点眼の特徴と用法
- 27 ステロイド全身投与の特徴と用法
- 28 NSAIDs点眼の特徴と用法
- 29 免疫抑制薬の特徴と用法
- 30 抗感染症薬の特徴と用法
- 31 副交感神経遮断薬の特徴と用法
- 32 交感神経刺激薬の特徴と用法
- 33 血栓溶解薬の特徴と用法
- 34 抗緑内障薬の特徴と用法
- 35 ぶどう膜炎の外科的治療
ぶどう膜炎の種類
- 前部ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎、全ぶどう膜炎の3種類がある。
- 前部は虹彩と毛様体、後部は脈絡膜、全体はすべての部位に影響。


症状
- 房水フレア、視覚障害、虹彩の色調変化、角膜浮腫などが見られる。
- 前房出血や蓄膿、虹彩後癒着も症状として現れる。
- 炎症が一部分に限局することはほとんどなく、隣接する組織に波及するのが一般的


原因
- 全身性・局所性の腫瘍、感染、免疫介在性疾患が原因となることがある。
- ぶどう膜炎の原因の26.0-44.9%は免疫介在性疾患に関連。
診断
- 完全な眼科検査と身体検査が必要。
- 子宮蓄膿症,歯根膿瘍, トキソプラズマ,猫のFIP,FeLVなどが原因となっていることがある。
- 虹彩,毛様体の腫瘍は,症状がぶ どう膜炎とよ く似ている(原発性:黒色種,転移性:リン パ肉腫)ので注意を要す る。
- 眼内が混濁して見えないときは超音波検査を行う。
- 前房穿刺や細胞診は眼球のリンパ肉腫を除き通常は行わない
- 硝子体穿刺は真菌感染カ凝われ視覚の予後が悪い眼球のみ行う。
- 血液化学検査( 高脂血症や糖尿病、感染症の確認が重要)。
- ぶどう膜炎の症例はすべてにCBC,血液生化学検査 を行い, 全身性疾患の有無を調べる(必要により,胸部 X線検査 ,感染性病原体に対する 血清学的検査を行 う)。
- ぶどう膜炎は数多 くの発症要因があるため,原因を特定することは難しい。犬猫のぶどう膜炎の多くは特発性(原因がわか らない) である 。
治療法
- ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、免疫抑制薬が使用される。
- 全身投与 プレドニゾロン0.5-2.0mg/kg,経口または皮下
- 局所投与 1%プレドニゾロン点眼液あるいは0.1%デキサメタゾン点眼液 を 1-2時間ごとから開始し日 3-6聞に切り替える。
- 頻 回投与ができない場合は,結膜下注射(トリアムシノロン10- 20mgあるいはベタメタゾン1-2mgを毎日)を行う
- アトロビン点眼液または 1%アトロビン眼軟膏を 1日2-3回, 点眼する。散瞳が不十分な場合は, 5%フェニレフリン点眼液を 併用する(1日 2-3回)。必要により抗菌剤の点眼と内服を行う。 投与後はエリザベスカラーを装着し,安静に保つ。
- 全身の感染症などによりコルチコステロイドが使用できない場合 は,非ステロイド性抗炎症剤を投与する。アスピリン, 40mg/kg/day, 72時間ごと,経口 ・フルニキシメグルミン,経口 ・非ステロイド性抗炎症点眼剤
- 局所ステロイドの副作用として、角膜への悪影響や眼圧上昇がある。
ぶどう膜炎の概要と重要性
ぶどう膜炎は犬や猫において一般的な眼疾患であり、視覚喪失や眼痛を引き起こす可能性がある。 獣医師は、ぶどう膜炎の治療だけでなく、全身状態の評価と診断も行う必要がある。
- ぶどう膜炎は眼のぶどう膜に炎症が生じる疾患である。
- 腫瘍や全身疾患の所見としても見られることがある。
- 獣医師は適切な診断と治療を行う必要がある。
診断手順と検査項目
ぶどう膜炎の診断には、詳細な問診と身体検査が必要であり、視覚検査や眼底検査など多くの検査が含まれる。これにより、原因を特定し、適切な治療方針を決定する。
- 問診では主訴、視覚の有無、眼痛の有無などを確認する。
- 一般身体検査や視診、視覚検査が行われる。
- 細隙灯顕微鏡検査や眼底検査、血液検査なども重要な検査項目である。
ぶどう膜炎の原因と分類
ぶどう膜炎の原因は多岐にわたり、感染性、免疫介在性、外傷性などがある。これらの原因に基づいて、ぶどう膜炎はさまざまに分類される。
- 感染性ぶどう膜炎にはウイルス、細菌、真菌などが含まれる。
- 免疫介在性ぶどう膜炎には水晶体起因性やぶどう膜皮膚症候群がある。
- 外傷性や全身疾患によるぶどう膜炎も存在する。
ぶどう膜炎の治療原則と薬剤
ぶどう膜炎の治療は、炎症の原因に応じた薬剤の使用が基本であり、ステロイドやNSAIDsなどが用いられる。外科的治療も考慮される場合がある。
- ステロイド点眼や全身投与が一般的な治療法である。
- NSAIDs点眼や全身投与も使用される。
- 免疫抑制薬や抗感染症薬も治療に含まれる。
ぶどう膜炎の定義と分類
ぶどう膜炎は、ぶどう膜に生じた炎症の総称であり、内眼炎と呼ばれることもある。 炎症の部位や原因に基づいて、さまざまな分類が行われる。
- ぶどう膜は虹彩、毛様体、脈絡膜から構成される。
- 虹彩炎、毛様体炎、脈絡膜炎などの部位による分類がある。
- 汎ぶどう膜炎や眼内炎、全眼球炎などの分類も存在する。
問診の重要性と内容
初診時の問診は、飼い主が最も気にしている点を把握し、治療の方向性を決定するために重要です。視覚の有無や全身状態、既往歴、生活環境などを詳細に確認します。
- 主訴を把握し、治療の希望を確認する。
- 視覚の有無を評価し、日常生活での行動を観察する。
- 眼痛や全身状態の確認が必要で、感染症や全身疾患の兆候を探る。
- 既往歴や生活環境を聴取し、潜在的な原因を特定する。
一般身体検査の実施
身体検査は全身疾患の徴候を把握するために必須であり、バイタルサインを確認します。体重や体温、脈拍数、呼吸数などを測定します。
- 体重、体温、脈拍数、呼吸数を測定する。
- ボディ・コンディション・スコアを評価し、脱毛やリンパ節の腫脹を確認する。
- 感染症によるリンパ節の腫脹や発熱の有無を確認する。
視診による眼の評価
視診では眼球の外観や眼瞼、結膜、角膜などを詳細に観察し、異常を特定します。左右対称性や眼瞼の状態を確認します。
- 眼球突出や眼球陥凹、眼瞼下垂の有無を評価する。
- 結膜充血や角膜潰瘍の有無を確認する。
- 角膜内皮障害や前房の状態を観察し、炎症の有無を評価する。
視覚検査の実施
視覚検査は、視覚障害の有無を確認するために行います。威嚇瞬目反応や綿球落下試験を実施します。
- 威嚇瞬目反応や綿球落下試験を行い、視覚を評価する。
- 前部ぶどう膜炎や後部ぶどう膜炎による視覚障害を確認する。
反射検査の重要性
対光反射や眩惑反射を検査し、眼の機能を評価します。異常が見られる場合は、病変部位を推定します。
- 対光反射は暗所で行い、瞳孔の動きを観察する。
- 眩惑反射は十分な光量で誘発し、反射の有無を確認する。
細隙灯顕微鏡検査の実施
細隙灯顕微鏡検査は、角膜や前房の状態を詳細に評価するために行います。炎症や障害の有無を確認します。
- 角膜潰瘍や内皮障害の有無を確認する。
- 前房フレアや炎症細胞を観察し、前部ぶどう膜炎の重症度を評価する。
眼圧検査の実施
眼圧検査は、ぶどう膜炎による眼圧の変化を確認するために行います。低眼圧や高眼圧の状態を評価します。
- 前部ぶどう膜炎では一般的に低眼圧が見られる。
- 慢性化した場合は低眼圧が持続し、続発緑内障の原因となることがある。
血液検査の実施
血液検査は、ぶどう膜炎の原因を特定するために行います。 高脂血症や糖尿病、感染症の確認が重要です。
- 血清中のコレステロールや中性脂肪を測定し、高脂血症を確認する。
- 血糖値を測定し、糖尿病の有無を確認する。
- 全血球計算やC反応性蛋白を測定し、感染症の有無を確認する。
特殊検査の実施
特殊検査は、眼内の感染や腫瘍の鑑別に役立ちます。眼房水や硝子体の検査が含まれます。
- 眼房水や硝子体を採取し、タンパク濃度や細胞診を行う。
- 蛍光眼底造影検査で網膜や脈絡膜の異常を検出する。
- 光干渉断層計検査で網膜の病変を検出する。
ぶどう膜炎の原因と診断
ぶどう膜炎は感染、腫瘍、全身疾患など多様な原因によって引き起こされ、正確な診断が治療方針や予後に重要である。 確定診断には病理組織学的検査が必要な場合が多く、臨床症状や検査所見から原因を特定することが求められる。
- ぶどう膜炎の原因は感染、腫瘍、全身疾患など多岐にわたる。
- 確定診断には病理組織学的検査が必要なことが多い。
- 臨床症状や検査所見から最も疑わしい原因を特定することが重要。
感染性ぶどう膜炎の種類
感染性ぶどう膜炎はウイルス、細菌、真菌、藻類、プロトゾア、リケッチア、寄生虫などによって引き起こされる。犬と猫で異なる感染源が存在し、それぞれの診断方法が必要である。
- 犬では犬アデノウイルスや犬ジステンパーウイルスが原因となる。
- 猫では猫伝染性腹膜炎ウイルスや猫免疫不全ウイルスが関与する。
- 各感染症の診断には臨床症状、抗体検査、遺伝子検査が用いられる。
免疫介在性ぶどう膜炎の特徴
免疫介在性ぶどう膜炎は水晶体起因性ぶどう膜炎やぶどう膜皮膚症候群などが含まれ、自己免疫反応によって引き起こされる。特に水晶体の状態が重要で、外科的治療が必要な場合もある。
- 水晶体起因性ぶどう膜炎は水晶体の破損や白内障に関連する。
- ぶどう膜皮膚症候群はメラノサイトに対する自己免疫反応が原因である。
- 診断には水晶体の状態確認や臨床症状の評価が必要。
外傷性ぶどう膜炎の原因
外傷性ぶどう膜炎は眼球への外傷や眼内手術によって引き起こされる。外傷の既往や痕跡の確認が診断に重要である。
- 外傷や手術の既往がある場合に発生する。
- 短頭種では眼球脱出、長頭種では眼球破裂が起こることがある。
- 超音波検査が診断に有効である。
全身疾患によるぶどう膜炎
高脂血症、糖尿病、高血圧などの全身疾患がぶどう膜炎を引き起こすことがある。これらの疾患の診断と管理が重要である。
- 高脂血症は房水に脂質が流入し、前部ぶどう膜炎を引き起こす。
- 糖尿病は急速に進行する糖尿病白内障からの水晶体起因性ぶどう膜炎を引き起こす。
- 高血圧は血管透過性の亢進によりぶどう膜炎を生じる。
眼内腫瘍によるぶどう膜炎
眼内腫瘍は原発性腫瘍と転移性腫瘍に分けられ、特にリンパ腫が多い。 腫瘍の診断には眼科学的検査が必要である。
- 犬では虹彩や毛様体の黒色腫が多く見られる。
- 猫では黒色腫や猫眼肉腫が発生することがある。
- 眼内腫瘍の診断には徹照法や超音波検査が有効である。
特発性ぶどう膜炎の特徴
特発性ぶどう膜炎は原因が特定できない場合で、ステロイド治療に反応することが多い。 病態は不明であるが、免疫異常が疑われる。
- 様々な検査を行っても原因が特定できない。
- ステロイド治療に反応することが多い。
- 片眼性・両眼性の症例が存在する。
ぶどう膜炎治療の原則
ぶどう膜炎の治療は、原因に基づく治療、障害の抑制、合併症への対策が重要である。 治療計画は、原因の診断と経過観察を重視する必要がある。
- ぶどう膜炎の原因は多様で、感染症、腫瘍、免疫異常などが含まれる。
- ステロイドの使用は、原因によって効果が異なるため、慎重な診断が必要。
- 治療法には局所投与と全身投与があり、前部ぶどう膜炎には局所投与が基本。
- 治療の目標を明確にし、経過を観察しながら治療方針を検討することが重要。
ぶどう膜炎治療薬の種類
ぶどう膜炎の治療には、ステロイド、NSAIDs、免疫抑制薬、抗感染症薬などが使用される。各薬剤の特性と副作用を理解することが重要である。
- ステロイド点眼は炎症抑制に効果があるが、角膜潰瘍には使用禁忌。
- NSAIDs点眼は抗炎症効果があり、ステロイドとの併用が可能。
- 免疫抑制薬は自己免疫性ぶどう膜炎に使用され、効果発現には数日から数週間かかる。
- 抗感染症薬は全身投与が基本で、感染の種類に応じた薬剤が選択される。
ステロイド点眼の特徴と用法
ステロイド点眼は、ぶどう膜炎の炎症を抑えるために使用される。 使用方法や副作用に注意が必要である。
- 使用される薬剤にはヒドロコルチゾン、プレドニゾロンなどがある。
- 点眼回数は3〜6回/日が基本で、重症度に応じて調整。
- 副作用として角膜の創傷治癒遅延や感染リスクがあるため、注意が必要。
ステロイド全身投与の特徴と用法
全身投与のステロイドは、重症のぶどう膜炎に対して使用される。副作用のリスクを理解し、適切に使用することが求められる。
- プレドニゾロンやメチルプレドニゾロンが主に使用される。
- 抗炎症治療では0.2〜2 mg/kg/日、免疫抑制治療では2〜10 mg/kg/日が基本。
- 副作用として感染の増悪や全身的な副作用に注意が必要。
NSAIDs点眼の特徴と用法
NSAIDs点眼は、プロスタグランジンの産生を抑制し、抗炎症効果を発揮する。 ステロイドとの併用が可能である。
- 使用される薬剤にはプラノプロフェン、ブロムフェナクなどがある。
- 点眼回数は2〜4回/日が基本で、重症度に応じて調整。
- 副作用として角膜創傷治癒遅延のリスクがある。
免疫抑制薬の特徴と用法
免疫抑制薬は、自己免疫性ぶどう膜炎の治療に使用される。 効果発現には時間がかかるため、ステロイドとの併用が考慮される。
- 使用される薬剤にはシクロスポリン、アザチオプリンがある。
- アザチオプリンの内服は1〜2 mg/kg/日が基本で、漸減が必要。
- 副作用として骨髄抑制や肝障害に注意が必要。
抗感染症薬の特徴と用法
感染性ぶどう膜炎には抗感染症薬が使用され、全身投与が基本である。 感染の種類に応じた薬剤選択が重要である。
- 抗生物質や抗真菌薬が使用され、全身投与が前提。
- 薬剤感受性試験に基づいて使用薬剤を決定することが望ましい。
副交感神経遮断薬の特徴と用法
副交感神経遮断薬は、ぶどう膜炎による眼痛の軽減や虹彩後癒着の抑制に使用される。 使用時には副作用に注意が必要である。
- 使用される薬剤にはアトロピン、シクロペントラートがある。
- 点眼や眼軟膏は1日1〜3回が基本で、重症度に応じて調整。
- 副作用として眼圧上昇や流涎があるため、注意が必要。
交感神経刺激薬の特徴と用法
交感神経刺激薬は、散瞳作用を持ち、虹彩後癒着に対する効果が期待される。 眼痛軽減の効果は期待できない。
- フェニレフリンが使用されるが、猫では効果が薄い。
- 副交感神経遮断薬との併用が一般的である。
血栓溶解薬の特徴と用法
血栓溶解薬は、前房内や隅角のフィブリン融解を目的に使用される。使用時には出血のリスクに注意が必要である。
- 組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)やウロキナーゼが使用される。
- 最大投与量はtPAで25 μgとされ、眼内出血のリスクがある。
抗緑内障薬の特徴と用法
ぶどう膜炎による続発緑内障には、房水産生抑制の効果がある点眼薬が使用される。 使用時には副作用に注意が必要である。
- 炭酸脱水酵素阻害剤や交感神経β受容体遮断薬が候補となる。
- プロスタグランジン製剤や高張浸透圧薬は使用を避けるべきである。
ぶどう膜炎の外科的治療
ぶどう膜炎に対する外科的治療は、水晶体起因性ぶどう膜炎に対する水晶体摘出術が主である。 合併症がある場合は外科的介入が必要である。
- 虹彩後癒着や続発緑内障に対しては外科的治療が必要。
- 眼内腫瘍によるぶどう膜炎では眼球摘出術が適応となる。