ブックレビュー「生き方」

生き方/稲盛和夫(1932-2022)

  先行きが見えない不安の時代に危機感を抱く著者が生きる意味と人生のありかたを根本的に問い直し、シンプルな原理原則に従がい行動することの重要性を説いた書と感じました。

  企業再生、経営の神様的な存在、元々は技術者で1958年京セラを立ち上げ「人間として正しい生き方を志し、ひたすら貫き続ける」ことで京セラを育て上げ、さらに通信事業KDDIを立ち上げ、ミタ工業(コピー機メーカー)、日本航空を再生するという実績があります。

  優秀な技術者でもあり、経営者になれたのは、勤勉と美徳、努力と行動そして公明正大で利他の心なのだと思います。

私なりに要約すると

シンプルな原理原則とは

・人間として正しい生き方を志し、ひたすら貫き続ける。

・公明正大で利他の心

労働に対する考え方

  かつて日本人は働くことに深い意味と価値を見いだしてきたが、労働を物質的な豊かさを得るために必要なお金を得るための苦役という考え方に慣れてしまったのが残念。

  子供の人格形成に深くかかわる教職という「聖職」にも浸透してプライドや真摯さを失い、マニュアルどおりに知識を教えていればいいという一介の労働者になってしまった(166頁)。

事業(人生)で成功するためには

  集中力と思いをどれだけ強く抱き長く持続して実現のために真摯に取り組めるかが成否を分ける。

  人生・仕事の結果=考え方(人格)×熱意×能力

 (熱意と能力が100点でも考え方が-10点なら、-10万点になってしまうから考え方が重要)

  考え方とはその人の人格(哲学・理念・思想・道徳)

 人は3種類に分かれる。不燃性の人は社員にしない。

 ・自然性(自分で勝手に燃え上がる)、

 ・可燃性(火を近づけると燃え上がる)、

 ・不燃性(火を近づけても燃えない)

 まさに超自然性の人で可燃性の人にたくさん火をつけたようです。

人格を磨くには

・目先の利益にばかり囚われず、原理原則でシンプルに生き抜く。

・自分の可能性を信じ、利他の心で今日一日を仕事に打ち込む。

・素直な心で怒り・欲望・妬みをコントロールする。

宗教観

65歳で引退、出家し仏門に入る。

 科学で説明できない宇宙の起源も神が作ったとしか言いようがない人間には不可知の宇宙の意思がある。生まれた時から運命と因果法則の2つの力で動かされている。

 心を磨いた最高のレベルが悟りの境地、人生の目的は魂を磨いて生まれた時よりも少しでもましな人間になること。

 すべての人が天から役割を与えられ演じている。人生は自分が主人公の自作自演のドラマだから同脚本を書き演じていくか、心に描いたものが人生になる。

まとめ

 結核を患い、希望の大学に落ち、希望の就職ができなかったなど才覚に恵まれた優秀な人間ではないと自覚していたがゆえに人格と熱意を磨き「人間として正しい生き方を志し、ひたすら貫き続ける」ことで素晴らしいリーダーになられたのだと思います。

 物質的な貧しさを経験し、高度経済成長・ITの爆発的発展のなかで時流にのり前述のシンプルな経営方針で目先の利益に惑うことなくモノづくりに徹するということは優秀な経営者でもなかなかできないことではないでしょうか。

 正しい心とシンプルな原理原則でブレずに思い続け成し遂げることの難しさと必要性を教えられました。

 稲盛さんのような生き方はできませんし、おしつけることも出来ないと思いますが、ゆとり教育と生ぬるい社会で育った私たちが世界の中で生き残っていくためにも読んで欲しいと思います。

 稲盛さんのような働き方を不燃性の社員に強要するとブラック企業と言われるかもしれませんが、公明正大に評価された可燃性の人にはホワイト企業なのでしょうね。

6つの精進(137頁)

①誰にも負けない努力

②謙虚にしておごらず

③反省ある日々をおくる

④生きていることに感謝する

⑤善行利他行を積む

⑥感性的な悩みをしない

その他

前の記事

保護中: ポエム