遺書と遺言書とエンディングノート
ぽっくり死ねるとありがたいのですが、準備もせずそんなことになるとネット銀行口座とかどうなってしまうんだろうとか、遺品はどうなってしまうだろうとか、死人にプライバシーはあるのだろうかとかいろいろ心配になってしまいます。
なにも準備していないと、残された遺族で財産の分割協議、遺品の整理、葬式、納骨と不本意な形で処理されることもあるでしょう。
終活に遺書(いしょ/自身の意思を伝える私的文書)と遺言書(いごんしょ/財産分与を決める公的文書)とエンディングノート(人生の終わり方を伝える私的文書)を残しておけば完璧です。
やっぱり、お蔵入りしたラブレターとか秘密の写真とか、絶対に他人に見せたくないものがあれば、『遺書』などで処分方法を遺族に指摘しておくか、デジタルアーカイブにしてパスワード保護しておくと良いですよね。
それとも、死んだ先のことなど考えても無意味なので成り行き任せが一番楽なんですかね。
遺書と遺言書とエンディングノートを残して死んでいく人は少数派でしょう(エンディングノートを知っていても実際に作成している人は少数です。 60歳~79歳で遺言書をすでに作成している人は3.4%(日本財団の調査)、エンディングノートの利用率はわずか8%(NTTファイナンス株式会社終活に関する実態調査)やっぱり面倒くさいのでしょうね。
後始末してくれる人の手間を軽減することと、人生の総括をして残された人生を悔いのないように生きるためにエンディングノートを書きたいなと思っております。
遺書と遺言書の違い
遺書と遺言書の違い深掘りしてみました。
遺書とは、自分の死後に残される家族、友人、知人など親しい人に向けて、自分の気持ちを伝える手紙のことで、主として、死期が間近に迫った人や自殺をする人が残すものです。
遺言書は、民法に定められた方式に従って自分の死後に、財産をどう分配するか法的効力をを持たせるものですが、遺書と同じように自分の「想い」を書くことはできるので(これを「付言事項」と言います。)、遺言書は遺書も兼ねることも可能です。
法的効力を持つ遺言書は公証役場で作成する遺言書と遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押した自筆証書遺言があります。
自筆証書遺言書の文例
自筆証書遺言書の文例を作ってみました。書き方を間違えると無効になるので要注意です。
遺言書
私は次の通り遺言する。
1.妻○○(昭和○○年○○月○○日生)に対して、次の財産を相続させる。
①登記事項証明書(法務局)のとおり正確に書く
②
2.長女○○(昭和○○年○○月○○日生)に対して、次の財産を相続させる。
①○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○
②
3.次女○○(昭和○○年○○月○○日生)に対して、次の財産を相続させる。
①○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○
②
4.1~3以外に記載した以外の私の財産を妻○○に相続させる。
(これを書いておけば、遺言に書いていない財産が出てきても、遺産分割協議をしなくても妻にあげれる。)
5.○○市○○町○○番地 長男○○を遺言執行者に指定する。
妻○○の今後の生活のことを想い、この遺言書を作成しました。
○○、△△、お母さんのことをよろしくお願いします。
みんな仲良く過ごしてくれることだけが私の最後の願いです。
令和○○年○月○日
○○県○○市○○町○○番地
○○○○ ㊞ 実印
(どんなことを書くか、遺言書に気持ち・魂が吹きこまれ円満相続になる。)
なぜ遺言を残したのか
具体的な思い出やエピソード
財産のストーリー
感謝のメッセージなど
書き方注意事項
全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押す。
用紙は,文字が明瞭に判読できる日本産業規格A列四番の紙とする。
縦置き又は横置きかを問わず,縦書き又は横書きかを問わない。
各ページにページ番号を記載すること。
片面のみに記載すること。
数枚にわたるときであっても,とじ合わせないこと。
様式中の破線は,必要な余白を示すものであり,記載することを要しない。
遺言執行者の仕事
遺言執行者を司法書士に頼むと相続財産の1~3%が報酬の相場。OKB銀行の遺言信託サービスを利用すると契約時に33万円、遺言書保管中6,600円/年、遺言執行時に遺産1億円以下なら1.65%とけっこうお高いサービス。
遺族でも遺言執行者になれるので家族を選任しておくとリーズナブルなのではないでしょうか。
具体的な遺言執行者の仕事
①自身が遺言執行者の任に就いた事実を相続人や遺贈を受ける人に通知すること、戸籍などの必要書類を集めて相続人や相続財産の調査を行うことなど。
通知書類や調査結果は、遺言書の写しと一緒に相続の権利をもつすべての人に交付しなければなりません。
②財産目録を作ったり、有価証券の名義変更や不動産の登記を変更したりするなどの手続きも必要です。
③預貯金の解約や売却の必要がある財産を換金するなども遺言執行者が行う手続き。
・預金の名義変更・払い戻し 金融機関
ネット銀行どうなるのかなと心配になったので楽天銀行について調べてみました。
手続に必要な書類は全て郵便によるお手続となり、相続の手続きに際して、各種パスワードや暗証番号は必要ないようです。
・株式の名義変更 証券会社
・不動産の名義変更 法務局
・自動車の名義変更 運輸支局
・相続税の申告 税務署
相続した財産の額から、借金や葬式費用を差し引くなどした後の額が、一定の額(基礎控除額)を上回るときに、相続税がかかります。
「基礎控除」の額は、3,000万円+(600万円×法定相続人数)
配偶者は「1億6,000万円」もしくは「配偶者の法定相続分」までであれば、相続税はかかりません。
相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内と決められていますが、名義変更の期限は決まっていません。
すべてが滞りなく完了したら、その旨を相続の対象者に報告します。
遺言執行者は手続きの進行状況を随時報告し、適切な管理のもとに遺産に損害を与えないようにする義務を負っています。さらに対象となる相続人や遺贈を受ける人に対して財産目録を作り、共有しなければなりません。
遺言書どおりに遺産分割する場合遺産分割協議は不要です。
遺産分割協議書
遺産分割協議書とは、遺産分割協議で合意した内容をまとめた書類です。
遺産分割協議には相続人全員の参加が必要で、話し合いによって遺産分割の方法と相続の割合を決めていきます。遺産分割協議によって相続人全員の合意が得られたら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。
1. 相続人を確定させる
遺産分割協議を行うためには、協議に参加する相続人を確定させなければなりません。
相続人を確定させるためには、被相続人の戸籍謄本などを取り寄せて確認します。
法定相続情報一覧図は、相続関係が一目でわかる公的証明書であり、法務局の登記官により証明されます。
法定相続情報一覧図を取得する最大のメリットは、相続の際に必要な手続きを簡略化できる点です。
認証された一覧図の写しが発行されることで、そのあとは公的な証明書として、前述した様々な機関で使用できます。戸籍謄本を何通も用意する必要がなくなり、手続きが効率化されるため時間の削減にもつながります。
ただしこれは、書類の提出先が多いなど手続きが煩雑な人が得られるメリットです。
名義変更が必要ない財産(金・架電・家具などの動産)のみを相続する方や、名義変更・解約手続きをする銀行が1つしかない方などは、あえて取得するメリットはあまりありません。
2. 被相続人の財産を確定させる
被相続人が所有していた財産を調べて確定させます。
財産は現金・預金・不動産といったプラスの財産だけではなく、借入金・ローンといったマイナスの財産もすべて把握することが必要です。
財産が確定したら、財産目録を作成する。
必ず用意する書類
・被相続人の戸籍謄本および除籍謄本(被相続人の本籍地である市区町村役場で取得 ※)
・被相続人の住民票の除票(被相続人の最後の住所地があった市区町村役場で取得)
・相続人の戸籍謄本または抄本(各相続人の本籍地である市区町村役場で取得 ※)
・申出人の氏名、住所が確認できる公的書類(運転免許証・マイナンバーカード・住民票の写しなど)
財産目録書き方
自分の財産を一番わかってる本人が死ぬ前に財産目録を作った方が良さそうです。(自筆証書遺言は財産目録のみパソコンでの作成が認められていて、遺言書自体はすべて自筆でなければなりません)
物件等目録
第1 不動産
1 土地
所在 ○○市○○町
地番 ○番○
地籍 ○平方メートル
2 建物
所在 ○○市○○町
家屋番号
種類
構造
床面積 1階
2階
第2 預貯金
1 ○○銀行○○支店普通預金
口座番号○○
2 ○○銀行○○支店普通預金
口座番号○○
第3 有価証券
財産目録にはすべての財産を記載する必要がありますので、プラスの財産もマイナスの財産も把握しておかなければなりません。プラスの財産とマイナスの財産は、下記のようなものが挙げられます。
プラスの財産
不動産、預貯金、有価証券(株式や債券など)、自動車、美術品、貴金属、ゴルフ場の会員権 など
マイナスの財産
住宅ローン、家賃、未払いの税金、未払いの医療費、偶発債務 など
パソコンで作成したものでも認められるようになったほか、預金通帳の口座情報がわかる部分のコピーや登記事項証明書(不動産登記簿謄本)のコピーなども、目録として添付することもできます。
普段利用の少ない口座は早めに整理して解約しておいた方が良さそうです。
遺産分割のトラブル
令和4年の遺産分割に関する事件は12,981件、そのうち認容・調停が成立した件数(分割しないを除く)は、6,857件。遺産価格別でみると最も多いのは1,000万円超5,000万円以下で全体の42.8%です。相続が争族にならないように、家族とよく話をしておくことや遺言書を作成するなど生前の準備は大切のようです。
エンディングノート
エンディングノートは、万が一に備えて、人生の終わりをどのように迎えたいか、自分の人生を振り返りながら、家族や友人に伝えておきたいこと、自分の希望などを書き留めた法的効力がないノート。
何度でも、いつでも書き換えることができるので、思いついた時にどんどん書き直せばいいと思えば敷居が低く感じられます。
書くことのメリット
①誕生から現在までの自分史や、好きな食べ物や趣味など内面的な部分を言語化し俯瞰して総括してみるとやり残したことが見えてくるかもしれない。
それが見えてくると悔いのない人生を送ることができるかもしれない。
②介護の希望や延命措置のこと、葬儀や費用の捻出方法などが明記されていれば、本人の判断力が衰えたり意思表示ができなくなったりした時も、家族が迷うことなく様々な選択をすることができる。
それにより家族の辛い気持ちも和らげることができる。
③自分の資産を正確に記入することで、現在の経済状況を把握できるので、人生の終末期をどのように過ごすのかを考え準備できる。
エンディングノートの書き方
1.自分のプロフィール
誕生から現在までの自分史や、好きな食べ物や趣味など内面的な部分を言語化し俯瞰して総括してみる。
①生年月日
②本籍地
③血液型
④家族
⑤家系図
⑥学歴、職歴、資格
⑦ナンバー
⑧運転免許証番号、健康保険証番号
⑨自分史
⑩人生のターニングポイント
⑪性格、信念
⑫人脈、仲間
⑬趣味・特技
⑭好きな食べ物
2.財産・資産について
年金証書や保険の証書、介護保険証や健康保険証、通帳・印鑑、貴重品などの保管場所は家族であっても知らないケースがほとんどなので保管場所などを書いておけば家族が対応しやすくなります。
①預貯金
②金庫などに保管している現金
③不動産
④有価証券
⑤貴金属
⑥骨董品など価値のあるコレクション
3.身の回りのこと
①SNSなどのデジタル情報はIDやパスワード。
退会手続きなどの操作方法をノートに記しておく。
4.家族・親族について
①家族や親族との思い出や感謝の気持ちなどを残しておきましょう。
②形見分けリスト
5.親しい友人・知人について
友人や知人、お世話になった方々への感謝の言葉を綴って、日頃言えなかった「ありがとう」の気持ちを残しておきましょう。
写真を一緒に貼っておくのもいいかもしれません。
6.ペット
残されたペットを引き取り、きちんと世話をしてくれる人を決めておかなければなりません。
7.医療・介護について
末期の状態になった時、自己判断ができなくなった時の延命措置などのも方法を決めておく。
認知症などで意思疎通ができなくなった場合の介護のことや費用捻出方法。
8.葬儀・お墓について
①信仰する宗教
②葬儀の方法(密葬・家族葬など)
③納骨の方法・場所
④お墓について
⑤遺影に使う写真
9.相続・遺言書について
遺された家族同士でトラブルにならないよう遺言書を残して保管場所を記しておく。
10.連絡先
自分の親族や親しい友人の連絡先を記入しておく。
亡くなったことを連絡してほしい人がいる場合には、その旨記載しておく。
11.自分からのメッセージ
エンディングノートを書くことで、人生の総括をする