膵炎

膵液は、タンパク質・脂質・糖質を消化する酵素を外分泌している。

  • アミロプシン (アミラーゼ) – デンプン を 二糖類 の マルトース にまで分解する。 マルトース を グルコース に分解する マルターゼ は小腸壁に存在する。 …
  • ステアプシン (リパーゼ) – 胆汁 で 乳化 された 脂肪 を 脂肪酸 と モノグリセリド に分解する。
  • トリプシン ・ キモトリプシン – タンパク質 (ペプトン)を消化する。 …
  • ヌクレアーゼ – 核酸 を分解する。

 たんぱく質でできている膵臓を消化しないよう、膵臓では不活性型のトリプシノーゲンとして貯蔵され、胃液や腸液と混じりあうことで活性型のトリプシン活性化され消化能力を発揮します。

  ところが、なんらかの原因で膵管が塞がって膵液の流れが滞り膵管のすき間から膵液がもれ出したり、トリプシノーゲンの不適切な活性化が生じると自己消化を制御できなくなり膵炎を発症する。

膵炎は、上腹部痛、腹痛による嘔吐、 食欲不振、下痢を起こす。

膵炎に特異的な治療は無い。支持療法を組み合わせて治療を行う。

鑑別疾患リスト

犬の急性膵炎の鑑別疾患リストを作成します。急性膵炎は多くの病態と症状が重なるため、他の疾患を除外する必要があります。以下の疾患を鑑別に考慮するべきです。

1. 消化管疾患

  • 消化性潰瘍
    胃や十二指腸の潰瘍が膵炎と似た症状を引き起こすことがあります。
  • 腸閉塞(腸捻転、腸重積)
    腸の閉塞や捻転が原因で腹部の痛みや嘔吐が生じ、急性膵炎と誤診されることがあります。
  • 腸炎
    腸の炎症による嘔吐や下痢が急性膵炎の症状に似ている場合があります。

2. 肝胆道系疾患

  • 肝炎(急性肝炎、脂肪肝)
    膵臓と肝臓は解剖学的に近いため、肝炎や脂肪肝が膵炎と重なる症状を引き起こすことがあります。
  • 胆管炎
    胆嚢炎や胆石が膵炎に似た症状(嘔吐、食欲不振、腹痛)を引き起こすことがあります。

3. 腎疾患

  • 急性腎不全
    腎機能の低下が膵炎の症状に似ていることがあるため、腎不全を除外する必要があります。
  • 尿毒症
    急性腎不全や尿毒症による全身症状(食欲不振、嘔吐、腹痛)が膵炎と似ている場合があります。

4. 血管系疾患

  • 腹部動脈瘤
    腹部の大動脈の動脈瘤が破裂すると、急激な腹痛を伴い、膵炎と誤診されることがあります。
  • 血栓症(門脈血栓など)
    血液の凝固異常によって膵臓や消化管の血流が悪化することで、急性膵炎に似た症状を引き起こすことがあります。

5. 内分泌疾患

  • 糖尿病ケトアシドーシス(DKA)
    糖尿病が進行しケトアシドーシスを引き起こすと、急性膵炎に似た症状(嘔吐、腹痛、食欲不振)が現れることがあります。

6. 感染症

  • 腹膜炎
    腹膜に感染症が広がることで、急性膵炎に似た症状を引き起こすことがあります。
  • 細菌性消化管感染症(カンピロバクター、サルモネラなど)
    細菌性の感染症が膵炎の症状に似た消化器症状を引き起こす場合があります。

7. 腫瘍

  • 膵臓腫瘍
    膵臓に良性または悪性の腫瘍ができることがあり、急性膵炎と似た症状を引き起こす場合があります。
  • 消化管腫瘍
    胃や腸の腫瘍が膵炎と似た症状を引き起こすことがあります。

8. 中毒

  • 毒素による急性膵炎
    例えば、カリウム塩、ホルモン、薬物(例えばステロイドなど)による膵炎の誘発。
  • 食事中の高脂肪食
    高脂肪の食事が膵炎のリスクを高めることがありますが、急性膵炎と似た症状を引き起こすこともあります。

9. 胃腸障害

  • 胃拡張-ねじれ症候群(GDV)
    胃が膨張してねじれることで急性の腹痛や嘔吐を引き起こし、膵炎と似た症状が現れることがあります。

10. アレルギー性反応

  • 食物アレルギーや薬剤アレルギー
    アレルギー反応による消化器症状(嘔吐、腹痛、下痢)が膵炎と類似することがあります。

犬の急性膵炎

犬の膵炎は急性膵炎が主体で,高脂血症,高脂肪食や無分別な食事管理および遺伝的素因が主な発症因子。

急性膵炎は、消化酵素がすい臓内で活性化されることよってすい臓が自己消化され無菌的に発症する急性炎症のことをいいます。

急性膵炎の治療

  1. 原因物質の除去
  2. 絶食療法:重度の幅吐を伴う場合にのみ短期間(12~24h)行う
    • 絶食療法は消化管内細菌の体内侵入を増長し敗血症を招く
  3. 静脈内輸液
  4. 補助療法ー血漿10mg/kg
  5. 疼痛緩和(重要)一
    • フエンタニル、ブトルファノール
  6. 制吐剤-α2又は5HT3拮抗剤
    • オンダンセトロン、マロピタント
  7. グルコン酸Caの補充
    • 膵液の腹腔内漏出で脂肪がトリグリセリドになりCaと結合して低Ca血症になる。
  8. H1, H2ブロッカ
  9. 低用量ドパミンの点滴ー5μg/kg/min
  10. 広範囲スペクトル抗生物
    • 無菌的に発症が多いが、腸内細菌の移動増殖が起こりやすい。エンロフロキサシン、アンピシリン

ステロイドを使うべきか?(chatGPT)

急性膵炎の治療において、ステロイドの投薬は一般的に避けるべきとされています。

ステロイド(例えば、プレドニゾロンなど)は、炎症を抑える効果があるため、いくつかの疾患で使われることがありますが、膵炎に関しては問題があります。以下の理由から、急性膵炎に対してステロイドの使用は避けられることが多いです:

ステロイドの影響

  1. 膵臓への負担
    ステロイドは、膵臓にある膵酵素の分泌を増加させる可能性があり、これが膵臓の炎症を悪化させる原因になることがあります。膵臓がすでに炎症を起こしている状態でさらに刺激を与えることは、症状を悪化させる恐れがあります。
  2. 免疫抑制作用
    ステロイドは免疫系を抑制する作用があり、膵臓の炎症を引き起こしている原因が細菌やウイルスである場合、感染が悪化するリスクもあります。

ステロイドが使われる状況

急性膵炎の治療において、ステロイドは通常使用されませんが、**膵炎が慢性化し、免疫介在性疾患(免疫系が自己の膵臓を攻撃している状態)**として疑われる場合などには、ステロイドが使われることがあります。この場合でも、獣医師が慎重に判断して処方することが求められます。

ですので、急性膵炎の場合、ステロイドは避け、痛みの管理や膵臓への負担を減らす治療が優先されます。

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フザプラジブナトリウム水和物

本品1バイアル(4mg)を1mLの日局注射用水で溶解し、犬の体重1㎏あたりフザプラジブナトリウム水和物0.4mg(無水物として)を1日1回、5日間静脈内投与する。

フザプラジブナトリウム水和物は、膵臓内での炎症の抑制酵素の過剰分泌の抑制に働きかけることが示唆されています。膵炎は膵臓の自己消化による炎症が関与する疾患であり、過剰に分泌された膵酵素が膵臓を傷つけ、さらに炎症を引き起こすことが問題となります。この薬はそのようなメカニズムをターゲットにしているとされています。

犬の急性膵炎のエコー検査の特徴的な所見

ChatGPT:

犬の急性膵炎におけるエコー検査の特徴的な所見は、膵臓の炎症によって変化した構造や血流に関するものです。エコー(超音波検査)は、急性膵炎の診断を補完するために非常に有用で、以下のような所見が特徴的です。

1. 膵臓の腫大

急性膵炎では膵臓が炎症を起こし、腫大することがよくあります。膵臓全体または部分的に膨張し、正常のサイズより大きく見えることがあります。

  • 特徴: 膵臓の辺縁が不整に見えることがあります。
  • 評価: 膵臓の体積の増大や形態の変化をエコーで評価します。

2. 膵臓内部のエコー不均一性

膵臓内部にエコーの異常が現れることがよくあります。急性膵炎では、膵臓内のエコー密度が変化し、通常よりもエコーが不均一(低エコーと高エコーが混在)になります。

  • 特徴: 膵実質のエコーが不均一に変化し、局所的に低エコー(黒く見える部分)や高エコー(白く見える部分)が見られることがあります。
  • 評価: これにより膵実質の浮腫や出血、脂肪変性などを示唆することができます。

3. 膵臓周囲の液体貯留

膵炎が進行すると、膵臓周囲に液体貯留(膵周囲の炎症性浮腫や膵嚢胞)が見られることがあります。これが膵臓の周囲に明瞭な低エコー領域(液体貯留)として見えることがあります。

  • 特徴: 膵臓の周囲に液体の貯留が現れることがあり、これを「膵臓周囲の炎症性浮腫」と呼ぶことがあります。
  • 評価: 液体が膵臓の周囲や近隣の組織に蓄積していることが確認されると、急性膵炎の進行を示唆します。

4. 膵臓内の液体貯留(膵嚢胞)

膵臓内に液体を含んだ嚢胞が形成されることがあります。これらは急性膵炎に伴う膵液の漏れや膵管の閉塞による結果です。

  • 特徴: 膵臓内に小さな嚢胞が見える場合、これが膵炎による液体の集積を示している可能性があります。
  • 評価: 嚢胞の大きさや形態、内容物の性質(液体か膿か)を確認することが重要です。

5. 膵管の拡張

急性膵炎により膵管が閉塞することがあります。その結果、膵管が拡張し、エコー上で拡大した膵管が見えることがあります。

  • 特徴: 膵管の拡張が見られる場合、膵炎による膵液の漏出や膵管の閉塞を示唆します。
  • 評価: 膵管が広がっているかどうかを確認し、その程度を測定します。

6. 膵臓周囲の血流変化(ドプラ検査による評価)

ドプラ超音波を使用することで、膵臓やその周囲の血流の変化を評価できます。急性膵炎に伴って血流が変化することがあります。

  • 特徴: 急性膵炎では膵臓や周囲の血流が増加していることがありますが、重症化すると血流が減少することもあります。
  • 評価: 膵臓や周囲組織の血流の変化を観察することで、病変の進行具合を確認できます。

7. 膵臓内のガスの存在

膵炎が重症化すると、膵臓内で膿が形成され、膿瘍やガスが含まれることがあります。これらはエコー検査で空気を含んだエコーが異常に反射するため、膵臓内でのガスを確認できます。

  • 特徴: 膵臓内にガスを伴った反射(高エコー)が現れることがあります。これは膿瘍などの膵臓内での膿の存在を示唆します。
  • 評価: 膵臓内にガスが含まれるかどうか、またその分布を確認します。

8. 膵臓と周囲のリンパ節の腫脹

急性膵炎に伴って、膵臓周囲のリンパ節が腫脹することがあります。これがエコー上で膨らんで見えることがあります。

  • 特徴: 膵臓近くのリンパ節が腫れて、エコーで低エコー領域として見えることがあります。
  • 評価: リンパ節の腫脹が膵炎に関連しているか、別の疾患によるものかを評価します。

まとめ

エコー検査による急性膵炎の診断は、膵臓の腫大、エコー不均一性、液体貯留、膵管拡張、膵臓周囲の炎症性浮腫や血流の変化などを評価することに重点を置きます。膵臓における異常所見を複数確認することで、急性膵炎の可能性が高まりますが、確定診断には血液検査やその他の画像診断と組み合わせて評価することが重要です。

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