世界は経営で出来ている

読書

著者:岩尾 俊兵/慶應義塾大学商学部准教授。東京大学博士(経営学)

 事業の目的達成ため計画的に意思決定をおこない実行し事業を管理遂行することを経営という。

 事業を日常や人生に言い換えれば、日常も経営で溢れているし人の共同体を世界というなら世界は経営でできているとも言える。(比喩を多用しこの概念を説明しようとされているがへりくだった言い方がうっとうしく読みづらいような気がするが・・)

 究極の事業目的は価値を創造し豊かな共同体を創りあげることなのだが、金を儲けること奪うことに血眼になる目的と手段の転倒や手段の肥大化で世界から経営が失われている。

 部分に気を取られて全体を見失い、短期利益を重視して長期利益を逸する。

 手段に囚われて目的を忘れ、顧客に満足を提供して報酬を受け取る仕事は組織や手段の肥大化で、何のために誰のためにあるのかわからない作業や顧客不在の仕事のための仕事に費やされ世界から経営が失われている。

 確かに、高度に分業化・専門化し複雑化する現代、何のために仕事をしているのか生きてるのか見失いがちになりそう。

 人生という自分の事業をマネージメント(経営)するには、忘れがちな目的を見直す必要があると思うが、それなりに衣食住が満ち足りた生活では後回しになりがち。

 あなた癌ですよ!そんなに長く生きられませんよ!などと切羽詰まった状況にでもならないと難しいような気もする。

 物事の本質を言語化するため示唆に富んだ例え話がたくさん書かれてました。人間を俯瞰的に見るとこんな感じに見えるんだなあと思います。

・貧乏は金・時間・知識・信頼という資源の収入と支出のバランスが崩れた状態。

・配偶者も元は他人、家庭内顧客として対応すべき相手。

・恋愛は手段、目的は自分と相手の幸せ。理想の相手の存在確率と自分の恋愛成就確率を高く見積もりがちで失敗する。

・人間の思考は始まりも終わりもない円環思考。全体を俯瞰しないと時間を浪費しがち。

・SNSは他者からの尊敬(いいね!)に飢えている。時価総額自慢型のマウンティングには敗北しかない。相互尊敬が大事。

・怒りの原因は嫉妬、困惑、あせり、期待、失望。原因を理解しないと怒りは治まらない。

・孤独は自分を尊重してくれない、理解してくれない、共感されていないという悩みで相手は表面的な部分しか理解してくれない。克服するには絆と共感と連帯が必要。

・居場所がない現役を引退した老人が元の職場に居場所をさがし晩節を汚す。

・お金は使って意味がある。節約をしてお金を貯めてポックリ死んだら一番の無駄遣い。

・芸術が成立するには作品の価値が想像され理解される「芸術ネットワークの経営」が不可欠。鑑賞者の魂を揺さぶるには顧客を深く理解する必要がある。芸術作品は人と物のネットワークによって作られる。

結論

 誰もが人生を経営する当事者。経営は『価値創造(=他者と自分を同時に幸せにすること)という究極の目的に向かい、中間目標と手段の本質・意義・有効性を問い直し、究極の目的の実現を妨げる対立を解消して、豊かな共同体を創り上げること。

 誤った経営概念によって人生に不条理と不合理がもたらされ続けている。本来の経営概念に立ち返らないと個人も社会も豊かになれない。

 他者から何かを奪って自分だけが幸せになることも、自分を疲弊させながら他者のために生きるのも、どちらも間違いである