乳腺腫瘍

  • 発生率犬の乳腺腫瘍の発生率は約500 頭に1 頭である。
  • 雌犬において乳腺腫瘍は,腫瘍全体の25- 50 % を占める
  • 犬にみられる乳腺の腫瘤のうち40- 50 % は良性である
  • 犬の乳腺腫瘍で最も一般的なのは良性の混合腫瘍(線維腺腫) である
  • 発情を迎える前に避妊された動物は, その生涯で乳腺腫瘍を発生するリスクが1 % 以下である。この予防効果も次の発情を迎えるたびに低下し, 4 回目の発情を迎えるか約2.5 歳齢になった時点でその予防効果はまったく失われる。
  • 乳腺腫瘤の針吸引生検を行わない。約1/3で偽陰性、良性、悪性の判断も一般的には困難(外科不適応となる炎症性乳癌を除外)
  • 猫において, 乳腺腫瘍は皮膚腫瘍とリンパ肉腫に続いて3 番目に多い発生率である。
  • 猫の乳腺腫瘤のおよそ80- 90 % が悪性で, しかも転移率は高い
  • 猫では乳腺腫瘍の80- 90 % が腺癌である
  • リンパ管への浸潤がよく起こり,腋窩と鼠径リンパ節,肺,肝臓,および脾臓への転移が多くみられる
    骨格への転移はまれである
    典型的には, 乳腺組織の悪性腫瘍はリンパ系を経由して転移する。

第1 および第2 乳腺は恒常的に腋窩リンパ節へと排液しており, 第4 および第5 乳腺は浅鼠径リンパ節へと排液している。 また,頭側の3 つの腺は,頭側胸骨リンパ節へと排液している3,犬の場合, 第3 乳腺は頭側あるいは尾側に排液するまた対側鎖へのリンパ排液の可能性もある。

猫には双方の側鎖に4 つの乳腺がある。 犬のリンパ排液と類似しているが, 対側鎖への排液は猫ではほとんど起こらない
これ以外に横隔膜と腹部リンパ節へのリンパ排液経路も報告されており, 転移経路となる可能性がある。乳腺腫瘍は, 所属リンパ節や肺への転移が最も多い。 肝臓, 心臓, 腎臓, 皮膚, 脳,および骨といった他の臓器や組織への絋移も起こる。

腫瘤切除:直径が5mm以下で悪性徴候が認められない場合に適応

乳腺部分切除:・腫傷の直径が3cm以下で単発性の場合で悪性徴候は認めない

乳腺全切除:o腫傷が多発性である場合・悪性徴候が認められる?(炎症性乳癌以外)

避妊手術は少なくとも良性腫揚の発生率は低下させる可能性が高い・悪性腫傷の発生率は変化なし

犬の腫瘍の 発生には 多くの 環境的, 遺伝学的因子が 関与しており, ホルモンが乳腺組織の腫瘍形成に影響することがよく知られている。エストロジェン, プロジェステロン, 成長ホルモン, およびプロラクチンはすべて乳腺ゲノムに影響を与え, 結果的に悪性の表現型を発現しうるエストロジェン受容体の同定を行った研究では,犬の乳腺腫瘍の40- 60 % に受容体を確認し, これが治療法に影響を与える可能性があると示唆している

最近のある研究は,乳腺腫瘍の発生リスクとして食事因子を明らかにした1 歳齢時の肥満,診断1 年前の時点での肥満, および赤身肉の摂食が,未避妊犬と避妊犬の両方で, 乳腺腫瘍の発生リスクの増加に関連していた.
生化学検査, および転移の有無を確認するための腹背方向および右側と左側万向の胸部x 線検査を含めて行うべきである。血液検査の結果または触診により腹部臓器への転移が疑われた場合は,腹部の超音波診断を行う。

炎症性乳癌

  • 炎症徴候を伴う極めて悪性度の高い乳癌
  • 診断時からの平均生存日数は25日
  • 外科摘出は著しQOLを低下させるため禁忌

炎症性乳癌は臨床的に乳腺の硬く熱感の広範な腫脹といった乳腺炎をまず疑うような徴候を呈する.
炎症性乳癌は, 早期にリンパ節へ転移する侵襲性悪性疾患であり,リンパ管閉塞に起因する四肢の浮腫を生じる場合もある。乳腺のFNA または切除生検が, 確定診断し乳腺炎と鑑別するために用いられる。 しかしながら,疾病が進行している場合には,播種性血管内血液凝固が生じる可能性があり, 完全な腫瘍摘出が困難なので, 外科的摘出術は不適切である3-5。早期の腫瘍再発が認められるのが通常である

犬の炎症性乳癌は急速に進行し極めて予後が悪く対応に苦慮する場合が多い。
病理組織学的には腫傷細胞による真皮リンパ管塞栓を特徴とする
医学領域では原発性、二次性に分類される

原発性炎症性乳癌:狭義の炎症性乳癌であり明らかな腫痛を認めず急性の乳腺の発赤・腫脹と腫傷細胞の真皮リンパ管塞栓を特徴とする。

二次性炎症性乳癌:広義の炎症性乳癌であり乳腺の発赤・腫脹をみるが進行乳癌の周囲組織への浸潤・転移によるものや術後に発症したものを指し、必ずしも腫傷細胞の真皮リンパ管塞栓を伴わない。

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