蛋白漏出性腸症(PLE)

PLNと肝不全が除外され、嘔吐下痢を呈する場合には PLEが強く疑われる。
消化器症状 が全くなくても、ここまでの検査で肝不全、PLNが除外できるのであれば強く疑うべき。
低グロブリン、T.Cholの減少が見られる場合が多い。
PLNでは T.Cholが上昇することもあり、肝疾患で胆汁うっ滞がなければT.Cholが減少する。
消化管内寄生虫(特に鈎虫、鞭虫)の有無を糞便検査で徹底して除外する。駆虫薬を試験的に内服させても良い。
画像検査:腹水貯留や削痩など消化管の病変は検出が困難である。
胸水・腹水の確認、イレウス像の有無、遊離ガスの有無をX線検査を行う。
消化管エコーでは腸重積を検出することができ、また局所異常の有無を知ることや、肥厚した腸管およびリンパ節 からの針吸引検査でリンパ腫が確定診断されることもあるので非常に有用である。
PLEを疑いアルブミンが<2.0g/dlであれば、 他の治療の反応を数週間みる間に、どんどん悪くなること があるので早期に腸の生検に持ち込む必要がある。

鑑別診断

IBD(若齢では稀)

リンパ管拡張症(猫ではほとんどない)

腫瘍(リンパ腫)

消化管潰瘍

寄生虫症 (若齢)

慢性腸重積(若齢)

治療

基本的には動物が胸水で呼吸困難になっているときや、腹水が多量 で状態を悪化させていると考えられるときに限って胸腹水貯留液を抜去を行う。
PLEの動物では基礎疾患が改善されない限り、貯留液を抜去してもすぐに胸腹水が貯留するため、不用意な 貯留液の抜去は脱水、低循環、電解質異常をきたす
絶食が有効あるいは必要なのは、急性の嘔吐下痢や消化管出血力顕著である場合のみで、一般的に慢性経過をたどるIBDで絶食をさせることはナンセンスである。
急性の嘔吐下痢であっても、48時間以上の絶食はすべきではない
絶食によっ て腸粘膜の再生が障害をうけていたり、繊毛が萎縮したりして病気を悪化させている可能性があるので注意が必要。

腸リンパ管拡張
リンパ管の通過障害によって蛋白漏出性腸症となる疾患。
原因として、リンパ管閉塞、リンパ腫、心外膜炎、先天的異常などが考えられてい るが、そのほとんどは特発性(原因不明)である。
診断
PLEは消化管エコーでは、軽度に消化管壁が浮腫性に肥厚することが多く、時として高エコー源性の縞模様がみ られることはあるが、確定診断は内視鏡検査による。内視鏡検査では、拡張したリンパ管が白色顎粒状に見られることは多いが、明瞭でないこともある。また、リンパ管拡張は腸全体に及んでいないこともあるため、できるだけ小腸の広い範囲を観察し、生検を行うことが重要である。最終的な診断は、病理検査による。

治療
ほとんどの場合は特発性であるため、蛋白の漏出を減少させ、腹水や浮腫を軽減させることが治療の目的となる。
脂肪とくに長鎖トリグリセリドによってリンパ管の拡張が助長されるため、蛋白漏出を軽減させるためには、食事は 長鎖トリグリセリドを制限した低脂肪食を与えることが推奨される。
脂肪制限によって体重減少が起こる場合には、中鎖トリグリセリド(MCT)を添加することで、リンパ管 の拡張を起こさずにカロリーを供給することもできるとされているが、その効果は明らかではない(推奨しない)。
脂溶性ビタミンが喪失している場合が多いので、食事にはこれらビタミンを補充しておくことが望ましい。
リンパ管通過障害の原因に炎症が関係しているケースや、蛋白漏出の原因として炎症性腸疾患が併発しているケ ースには、プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイドが有 効な場合がある。
腹水をコントロールするために利尿剤を用いることもある。
重症の場合には、早急に血漿蛋白濃度を増加させるとともに抗凝固因子などを補うために、血漿輸血を行ったり、栄養供給のために中心静脈栄養(TPN) を行ったりする場合もある。
予後はさまざまで、注意が必要である。
治療にほとんど反応しない場合や、食事療法が困難な場合には、死に至るケースも少なくない。

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