消化管型リンパ腫
消化管型リンパ腫
リンパ腫は、猫の消化管の腫蕩の中で最も発生頻度の高いものであり、犬においても比較的発生頻度の高い消化管腫瘍である。
リンパ腫の中で病変 部位が腸間膜リンパ節、消化管、肝臓、牌臓などに限局 しているものを指すが、多中心型リンパ腫でも消化管に病 変が及ぶ場合がある。多くの消化管型リンパ腫の腫瘍細胞 の由来はBリンパ球であるが、猫では稀に大顆粒リンパ 球(LCD由来である場合がある。
症状
腹部触診にて肥厚した腸管や腫大したリンパ節、肝 臓、牌臓が触知されるケースもある。
腹膜炎を併発している場合には、腹水の貯留が認められることがある。
猫の腸管型リンパ腫の症例では通常、猫白血病ウイルス抗原が陰性である。
X線検査では、腹部腫痩あるいは腸管閉塞に伴う所見が認められるケースがある。
腹部超音波検査は非常に有用で、リンパ節、牌臓、肝臓などの腫大や、エコー原性の変化、腸管壁の肥厚、層構造の不明瞭化が確認できる場合が多く、超音波ガイドによる生検を行うこともできる。
内視鏡検査では、胃や十二指腸、小腸、結腸において非特 異的な異常所見(粘膜の不整、発赤、びらんなど)を認め る場合が多い。
診断
腫大したリンパ節、腸管、肝臓、牌臓からの 針吸引生検標本や、内視鏡などの生検組織スタンプ標本を用いた細胞診が有用
リンパ腫の病変部がリンパ球プラズマ細胞の炎症性浸潤に囲まれて存在している場合や、病変部が腸管薬膜面にしか認められず、リンパ球プラズマ細胞性腸炎と鑑別できない場合があり、これらのケースでは外科的な全層生検による材料を用いた病 理組織学的検査が必要となる。
治療
化学療法が用いられることが多いが、一般的に腸管型リンパ腫は多中心型リンパ腫に比較して化学療法に対する反応性が悪いとされており、長期的な予後は非常に悪い。
腸管型リンパ腫によって腸閉塞、腸穿孔を併発しているケースでは、化学療法の 前に開腹手術によって整復しておく必要がある。
また、大きなリンパ節腫瘍が腸管壁を巻き込んでいるケースでは、 化学療法によって腸穿孔を起こす危険性があるため、化学療法の前に外科的切除を考慮する必要がある。